[blog] 昭和の神戸三宮の姿を求めて⑥

東門街のピープルツリー

スナック南天 ①

SANSAROのマスターから教えてもらったのは、おそらくこの界隈でも最も歴史の長い、
いわゆる最古参のおばあちゃんたちに会える「スナック南天」でした。

スナック南天は、東門街に2店舗構えている釜飯と焼鳥のお店、
遅い時間まで空いているので有名な「南天」の創始者である横田さんのお店。

生田新道沿いの、ロンロンビルの3Fにあります。
東門街のピープルツリーと言っておきながら、早速東門街からハミ出しておりますが、気にしないでください。
御歳86とは思えない、とても元気で明るいお姉さんたちです。
そこで伺った話の一部始終をどうぞ。

かおるママ(以下A)「東急ハンズの斜め向かい言うたら角に『ムーンライト』があったとこやな」
横田ママ(以下B)「あのーあの頃、?ちゃんもなくなってもた。それからもう一人、??ちゃんも結婚してね、震災からどこ行ったかわからんくなった」
A「震災でなあ」
聞き手s「震災って大きいっすね」
B「そうやでえ。はあ。
 人と人がもう散り散りになるしね。やめてしまったりね。潰れたりね」
s「そっかー。今そしたらそのもうご健在でどっかその話聞けるっていうのって」
A「ああ、うちらの友達もね、そんなん人もみーんな亡くなって」
s「ああやっぱりそうですか」
A「もううちらが一番最後ちゃうか思う。歳で行ったらな」
B「86や言うたらね、大概やねえ」
s「お店してないですもんね、もうね」
A「してないわあ」
B「亡くなったりあんなんしとうからね」
B「みーんなもうね、孫の守りしたり、孫の時代なったりしとるから」
A「我々ぐらいなもんや、まだ」
A「昔なんて『ルグラン(ログラン?)』とかね、それからあの中国人の、なんやったかな、あの地蔵さんの近所でやっとった、兄弟でやっとった、あのー生田新道のあっち側の中国料理しとった、『樓外樓』のママ、クラブ、なんやったかな」
A「カズミちゃんが勤めとったあの」
B「樓外樓のママな」
A「クラブしとってん」
B「あの近所あのー全但のバスがあったとこやろ」
A「あーそうそうそう」
B「あの後ろに『みやす』言うてステーキハウスもう変わったけど、あれがすごい懐かしい『ぶらり横丁』言うてあったんよ」
B「そこに載っとうよ、ぶらり横丁」
B「あっこであんた、戦後そこでやっとったんよ」
A「そこのステーキ、美味しかったんよ」
B「今あんた2万円くらいするよ笑」
s「笑」
B「ここ来とったよな『みやす』のマスター」
A「あの樓外樓の店なんやったかなあ」
B「陳さんがよう行きよった」
A「そこ台湾のあのー陳さんな、漢方薬しとった」
B「加納町とこに」「漢方屋さん」
B「『たけとみ』の前に」
A「『パンドラ』や!」B「せやせや」
A「『パンドラ』や」
聞き手g「開けたら最後ですね」
B「そのママが樓外樓の。兄弟のな」
A「最後なるやん、自分とこのな、店の歌作ってな。
最後にパ〜ンド〜ラ♪パ〜ンド〜ラ♪言うてな、何回もかけて。
それで「おやすみ」言うて帰りよってん」
s「へえ〜〜!!!!」
A「お客さんおる前でな、みんな10時なったら帰るやん、ほなお客さん立ってもろうて、一緒に(手を繋いで?)パンドラ♪パンドラ♪言うてな、節があんねん。
その歌歌うて、ほいでお開き言うてみな帰りよった」
s「おお〜〜!!!!」
A「みな行儀よかってんで?ああ」
B「そやから『パンドラ』『ルグラン』言うのは有名やったからね」
s「なんすか、パンドラ音頭みたいな感じですか」
A「そうそう、ほんでね、昔みたいにエエバンドちゃう、オルガンがあってね、足踏んでこうプッププッププップ。それがエエ言うてな」
s「へえ〜〜!!!!」
g「それいつぐらいの話ですか?」
A「樓外樓が閉まった…(からそこでパンドラをした?)50年ぐらい前かなあ」
B「50年前やなあ」
g「50年!」
A「はあ」
C「パンドラ(が閉まった)はカズミちゃんがこっち移る前やから…30年ぐらい前かなあ」
s「あそうですか」
A「昔はもう生活がかかっとうから。一生懸命やった、みんな。うん」
s「昔の人ってすごいなと思います」A「ほいで、え?って言う子が英語パッパっとしゃべんねんもんな。エッ、この子が?言うのが。それぐらいみな学識があってん。はあ」
A「もう答えられんなかったらな(仕事にならへんから)。大概のABCなろとう人はこう、な。字ぃな。(筆談、だろうか?)
そやからもう日本人は偉いな言いよったわ」
A「こう筆談で、書いて、こう。よう会話せんから、ほな筆談で書いてこう渡す、と」
s「フムフム」
A「そやからみな、みな学校行っとったもんな。無学の子はおれへんかった」
s「へえ〜」
A「ええとこの子ーが多かったもん。お行儀ええしな」
s「すごいっすね!」
A「ほいであんなとこでもな、タイムカードなんかこう置いとうねんで、タイムカード。きちっと。うん」
s「ふぅ〜ん」
A「ほなもう、真面目な子はな、時間より早いこと来てタイムカード押して。ほなオーナーも見んねん、早い子ぉやなぁ、言うて目ぇつけてくれる。
ほなその人らに、あの『少しの気持ちやけども』って。スカーフとかな。ちょっとあのハンカチの洒落たやつとかな。お金ではくれへんねんで(笑)スカーフの洒落たやつくれたりな、手袋のあんなんくれたりしよってん。ボーナスの代わり。物が今みたいにないからな。うん。シルクの(手袋)、カネボウのスカーフくれたぁ言うて、ウチら喜んどった。うふふふ」
s「ふぅ〜ん!!!なんかすごい良い話ですねぇ」
A「今ないもんな、早く行ったからって」
s「あったかい話ですね」
A「まああんた、うちらなあ、おしゃれしたい時やん」
s「うん、うん」
A「ほなママにこんなんもろたぁ言うたらなあ、皆んなほなあ一生懸命がんばろう〜言う、な」
s「励みになりますもんね」
A「うん、うん」
A「その代わり、あの子にやってこの子にやらん言うんはアカンから、平等に。
この子にスカーフやったら、(あの子は)ちょっと小さいめな、シルクのハンカチな。あはは」
A「ほなお客さんにパッとシルクのハンカチな、お客さんに。
今みたいにおしぼりないやん、『お前エエの持っとうやん』って、お客さんに見せるだけでもな、あはは」
s「へぇー!!」(次回へ続く)