更新!! [blog] 昭和の神戸三宮の姿を求めて⑦

東門街のピープルツリー

スナック南天 ②
A「昔は夢があってんで?そなして。女の子も一生懸命働きよったもん。生活かかっとったから」
C「今もう立ちんぼとか怖いぐらいやもんねぇ」
s「僕たちもウルサイ立ちんぼイヤですもん」
C「もう後ろついてくるでしょう」
A「あんなんな、昔なかってんで。昔はもっと情緒があった」
B「日本のイイとこがなくなって、外国の悪いだけ取り入れて」
A「昔は情緒があって、情けがあったな、みな情(じょう)があった。飲んだら終わりとちゃうもん。運転手さんにお願いしてやな、自分の知り合いの運転手呼んだり、チケットもっとったらそこの、な、クルマ。うちらぜんたんタクシーか、文化タクシーか、銘柄のあるタクシー呼んで、ほんでお願いします言うて。ほいで盆と正月に、その運転手さんに、気持ちだけタバコな、あげたりな」
s「へぇー〜」
A「そうせんとな、またお願いします言えへんからな」
A「ほいで(タクシー)チケットが出だしてん。そやないと、財布ごと落とす人がおるやろ。チケット先に運転手さんに渡すねん。お願いします言うて」
s「馴染みの方がいたんですね」
A「そう!あそこのクラブは文化と全但や言うて決まっとったから」
A「それで大概あのーどない言うの、お客さんかて海外出張に行って、ほなうちらに香水買うて来てくれたりな。もう香水もろたら嬉しいてなあ。三菱商事とかなあ、商事会社の人が多かったから、その人らに頼んで。ほんでウイスキーは3本まで。言うてな。
5本なんて買われんから3本、1人3本。重たいめして帰ってくる」
s「はい、はい」
A「ほなその人の奥さんに今度は香水をあげんねん。そやから巡り巡って、な。(笑)
この人はこっち頼んで、ヨーロッパ行ったらこの人はこんなん頼んで。先輩がみな教えてくれんねん。」
B「昔はウイスキーなんて高かったからねえ。昔は3本までなら、フリーパスで持って帰れた。それを超えたら(税を)払わないかんかった」
s「そしたら向こう行くってなったら、みんなそれを楽しみにして持って帰って飲むみたいな」
A「その代わり、持って帰って来てくれたら、こっちもなんか渡さんと」
s「そうですね、確かに笑」
B「香水でも何オンス言うて、それ以上超えたらいかんかった」
A「ほな大丸の、なあ、あれ(お返し?)買うて来て。なあ。大丸の。買うて来て。
ほな大丸かて喜ぶ、大丸の人も商社マン、くるやん、こうずうっとお客さん回って、な」
s「すごいですね、経済回ってるじゃないですか」
B「ほな、大丸で買うて。大丸の人もお店に来てくれるし」
A「お金渡したら失礼やからな」
s「なるほどね!プラス気持ちも込めてですか」
A「うん。香水買うて来てもろたら、今度は違うとこ香水な、あの奥さんに何やーもろた言うたら、今度はその奥さんに「これ、お土産ー」言うて持って帰ってもらう」
s「へえ」
A「そやからみな昔の女の子は先輩に教えてもろて。ええとこ、学ぶとこ多かった」
B「ネクタイもようプレゼントしよったよぉ」
A「元町バザーもな、ようあそこで。ネクタイな。ようけ(買うた)」
A「元町バザーでええネクタイあった聞いたらウインドウ行って見に行ってこいって言われた、買うてこいとは言わん(笑)『見に行ってこい』って言うねやん、『ああ、見に行くわ』言うて。買うて来い言わんばっかしやねんもんな、お客さんもな。(笑)」
A「せやから昔のお客様は良かった。女の子かて遊ばしとったもん。遊ばして遊ばしてな。ほんで長居したァ言うたら『ゴッツゥ高いなあ』言うて(笑)
『わしが持って来たウイスキー売ってくれ!』言うて、あはは(笑)」
 
s「この南天さんはなんで南天なんですか、植物の南天ですか」
C「ママがね、台湾で生まれて。引き上げて帰ってきたのね」
B「私はほら、北斗七星は知らんでしょう、南十字星」
B「雪は見たことがない。引き上げて帰ってきた次の年の冬がめちゃくちゃ寒くてね。
雪は降るわ、それであの庭にあったのが南天の木やったんやわ」
B「それでもう、ほんまに、雪やのに青い葉っぱでしょう」
A「雪自体見たことないにゃもんなあ」
B「それで葉っぱの赤い実に、雪が積もんねん。ああ綺麗やなあ、と思って。
なんの木や言うたら、これが南天や言うてなあ」
B「それでね、何年かお店をするようになって、みんな社名を作らなあかんとなった時に、考えたってええ名前は(他のお店の名前で)大概ついてるのよ。これはあかんなあと思って、あ、南天にしようって。難を転じると言う意味もあるし。根が伸びて行くのね。ええ名前よーって言われて」
B「クラブしてた時は違ったんよ。お医者様が多かったからね。エンプラスね。女と男で。結局は女やから。女の記号♀があるでしょう。円と+で、エンプラス。」
A「昔みたいにキャバレーあってな、発散して帰りー言うてダンス教えてもろてな、くちゃくちゃなるまで飲んで、よう寝た言うて、ストレス解消なんねん。
給料日前でも建て替えてあげるって言うて。世話好きの女の子がおるんよ。
そしたら次来た時にあのおねえさん呼んでって指名がくる」
A「今日給料日やお姉さんおごるわって。大概うどん屋や。あはは」
s「うどん屋なんですか?!へえ〜」
A「うどん屋や。東門筋上がった時に『かずさ』ってあってん。そこはうどん専門やねん。丼とうどんしか売ってない。キャバレーの女の子ばっかしがくんねん。
座敷ないから、こうまるぅなったとこでね、食べたらゴッソーさん言うて早いとこ席退かなかったら。もう馴染みばっかしや。
ほんでその男の子は『今日はうどん。他言うたらあかん。丼もあかん!うどん!』言うてな。笑」
s「キャバレーの何百人といったお店の人たちはどこに行ったんかなと言うのはめっちゃ気になるんですけどね」
B「400人じゃ効かんぐらいお客さん来てはったんやから」
A「せやからその辺の食べもん屋は潤いがあってん」
s「ああ、確かに確かに!」
A「食べもん屋もいっぱいやそんなん満席なったら。もう4時5時なるときもあんねん」
s「朝のですか。すごい」
A「はあ、食べもん屋さん」
B「せやから私んとこなんか5時まで空いとったんやから、釜飯は」
s「ああ、そうか!そうですよね。それで今も遅くまでやっていると言う名残」
A「みそののバーテンやなんやなあ、ああ」
s「そう言うところから始まってんですね」
B「そうそうそうそう」
B「それで5時ごろで済むか言うたら済まんとやね、なんやらかんやら言うて、店閉めたらサァ行きましょう言うて再度山まで上がんねん、そこの横っちょからな、坂グーって上がって行ったら」
s「エッ、上がるんですか、再度山まで?」
B「うん、上がったお茶屋さんとこでラジオ体操やんねん」
s「えー!」
B「そのとこにおでん屋さんがあんねん。そのおでん屋さんで1杯飲むのがみな楽しみやから、お客さんも「行こか」言うたらついてくんねん。お酒飲めるから。ほいで、おでん食べて飲んでラジオ体操してよう帰りよった」
s「へぇ〜」
B「ほんでずーっと下降りて来たら公園とこで鳩ぽっぽに餌やって」
s「餌やって笑」
B「タクシー呼ぼか聞いても要らん言うて帰りよった」
B「昔は元気やったでぇ〜」
(続く)